2023年10月、小中学生の不登校は約30万人にのぼりました。前年が24万人ですので、1年で20%増加したことになります。
不登校の生徒にとって「学校が楽しい」と思うのは難しいことですが、オンラインによる授業が実を結んでいる事例があることがわかりました。
コロナ禍で広まったオンライン授業。その現在地と不登校問題への道筋をまとめました。
- オンライン授業の現在地
- コロナ禍とGIGAスクール構想
- より効果的・効率的な授業計画への期待
- オンライン授業の拡大と課題:未来の高等教育の形とは
- オンライン授業の不登校生徒への活用例
- 青森市立中学校の導入例
- 宮崎県延岡市の例
- 東京都足立区の例
- まとめ
オンライン授業の現在地
コロナ禍とGIGAスクール構想
オンライン授業の実現には、「GIGAスクール構想」という文部科学省の取り組みが背景にあります。「GIGAスクール構想」は簡単に言うと、誰でもICT(情報通信技術)を使えるように整備しよう、という取り組みです。その中核には「児童生徒向けの1人に1台端末を配布」があります。
この構想がコロナ禍で計画を前倒しされ、環境整備が一気に進みました。
より効果的・効率的な授業計画への期待
大阪大学が公開した資料に、オンライン授業導入後の分析がまとめられています。中でも大学におけるオンライン授業の 設計・実践と今後の展望の「終わりに」にて、ポイントが述べられています。
教育の観点から言えば,授業 を録画して繰り返し視聴することができる,授業資料を LMS (著者注:学習管理システム)で配布することができる,学習データを電子的に取り扱うことができる、といったメリットがあり、対面 で授業ができるような状況になったとしても、これらの メリットを活かした授業設計が重要になる。大学や学部 としても、対面とオンラインを組み合わせた教育設計を することで、より効果的、効率的な教育を行うことが期待できる。 コロナ禍における大学のオンライン授業の取り組みが、一時的な危機対応で終わるのでなく、今後のニューノーマルにおける新しい大学教育への転換につながることを期待する次第である。
大学におけるオンライン授業の 設計・実践と今後の展望 p25
「大学の授業」が対象の論文ですが、オンライン授業がコロナ禍の一時的な仕組みではなく、以下の点で効率的な授業設計が可能になったとしています。
・授業資料や学習データを電子的に取扱うことができる
・対面授業とオンラインを組み合わせた教育設計で、従来より効果的・効率的な教育を行うことができる
・今後のニューノーマルにおける新しい大学教育への転換に繋がると期待できる
オンライン授業の拡大と課題:未来の高等教育の形とは
こうした分析をもとに、アフターコロナでオンラインをどう活用するかが次の課題になっています。令和5年には大学・高専における遠隔教育の実施に関するガイドライン が策定されています。
・新型コロナウイルスの感染拡大により、大学や高等専門学校での遠隔教育が急速に普及している。遠隔教育の利点として、学生が自身のペースで学習できることや、選んだ場所で授業を受けることが挙げられる。
・しかし最近の調査によると、対象校の授業科目のうち、遠隔授業で実施される割合は2023年には約60%、2024年には約40%と減少傾向にある。
・ポストコロナ時代には、遠隔教育の利点を活かした新たな高等教育の形態を模索する必要がある。
・ただし、遠隔教育には学生と教員の間での質疑応答が制限されたり、友人との交流が難しくなるといった課題もある。効果的な指導体制やサポートスタッフの配置に関する知見を蓄積し、遠隔と対面の教育を組み合わせる方法を検討する必要がある。
・また、通信教育を行う大学以外の大学では、オンライン環境が全てを代替するわけではないことを留意する必要がある。
このように、オンライン授業が急速に整備された背景には国の施策があり、「この環境をどう活用すべきか?」というステップに進んでいるのが分かります。
さて、次章では焦点を絞り、「オンライン授業の不登校への活用」という観点で、既に勧められている事例をいくつか調べてみます。
オンライン授業の不登校生徒への活用例
青森市立小中学校の導入例
青森市では、新型コロナウイルスの拡大で2020年3月2日から5月10日まで、市内の小中学校の一斉臨時休校を実施しました。その間、学習の遅れが生じないようにと「オンライン授業」を実施したところ、不登校生徒の登校復帰率がかなり伸びたそうです。
その結果、文部科学省の「令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」で、不登校になった生徒のうち、登校できるようになった生徒の割合が2020年度は49.3%となった。
2019年度は26.1%だったので、2020年度はほぼ倍増したことになる。
全国平均は2019年度が22.8%、2020年度が28.1%なので、全国平均を大きく上回った。・・・
その結果、週1回程度、学校に来て、プリントなどを受け取って帰る状況にあった不登校の児童生徒の75%がオンライン授業に参加し、この内90%が2020年5月25日の学校再開とともに登校するようになりました。
学校再開後、登校した生徒に「オンライン授業」について聞き取りをしたところ、 以下のような意見が挙がりました。
・臨時休校中、登校しないのが自分だけではないので、気持ちが楽だった
「オンライン授業」導入後に“不登校”から“登校”できた市立中学校の生徒がほぼ倍増…理由を青森市に聞いた|FNNプライムオンライン
・周囲の目を気にしなくてもよいので、気持ちが楽だった
・新しい学習形態に興味をもった
この事例はオンラインの長所である「教室以外の場所でも受けることができる」という長所が現れた好例といえますね。不登校生徒の大部分がみんなと同じ環境で勉強したことで、登校する自信がつき、登校再開後に教室で授業を受けられるようになりました。
周囲の目が気になるけど、勉強はしたい、という不登校のニーズに対応できる点がオンラインの強みと考えて良いと思います。
宮崎県延岡市の例
宮崎県延岡市の不登校児童向けオンライン授業は、2023年9月から始まったようです。
まだ手探りな状態なようで生徒数も少ないですが、学校側から積極的に支援しようという心意気を感じる事例ですね。
画面越しに子どもたちとやりとりするのが、元校長の支援員2人だ。1カ月経ってもいまのところ、顔や声を出す子はいない。支援員の側からもそれは求めていない。
……
実施するうちに反応する生徒も増えて、手ごたえを感じているようです。
ただ、何かを呼びかけると、書き込みで返事する子は明らかに増えてきた。休むときも「これこれの理由できょうは入れません(参加できません)」と、丁寧な言葉遣いで伝えてくる。市教育委員会は、信頼関係ができつつあると見る。
……
また、来年度からは小学生も加わる。人数が増えた場合、いまの支援員2人だけで対応できるのかも不透明だ。
不登校オンライン学習、手探りの1カ月 参加生徒増え手応えも [宮崎県]:朝日新聞デジタル (asahi.com)
と、今後も続けられるかは不透明な状態でしたが、その後延岡市の不登校支援に関する記事のなかで「学びの多様化学校」を開設したと見つかりました。
今回の例のように、色々試しながらも児童のためになるようにと、延岡市が不登校支援に積極的に乗り出している姿が伺えます。
東京都足立区の例
最後に、東京都足立区のオンライン授業導入計画について紹介します。
足立区の資料「足立区 – 令和 3~6年度 不登校支援におけるICT活用実施計画(pdf)」を読むと、とくに不登校が長期化してしまった学童に「勉強の機会をどう届けるか」という観点で計画が立てられていることが伺えます。
これまで不登校の子ども達に対しては、学校内の別室の活用や、チャレンジ学級など学校以外の学習の場を通じて、寄り添い型の支援を行ってきました。一方、登校できないどころか、外出もままならない子ども達の中には、スクールソーシャルワーカーの家庭訪問や、チャレンジ学級などの居場所に繋ぐ従来型の支援だけでは対応しきれないケースも存在しています。
そこで、「学校やチャレンジ学級に行きたくても行けない。でも、なんらかの勉強はしたい」という子ども達の気持ちに寄り添うため、新たにICTを活用した不登校支援に取り組みます。
足立区 – 令和 3~6年度 不登校支援におけるICT活用実施計画(pdf)
あるべき姿については、資料の柱1-1.目指すべき姿でこう述べられています。
登校できない児童・生徒の自宅からの授業参加や、登校してもクラスに入れず、一斉授 業に参加することが難しい児童・生徒の学びを、ICT で支援します。 ICT を活用することで、教員も自宅学習の進捗や学習定着度を把握することができ、 学校以外での学習活動の評価が可能となります。学校や教室という場所に捉われず、全ての児童・生徒に学習の機会を提供できる仕組みづくりをめざします。
足立区 – 令和 3~6年度 不登校支援におけるICT活用実施計画(pdf)
活用実施計画では、リアルタイムでの専門員のオンライン配信を皮切りに、将来的には登校している生徒の教室からオンライン配信も導入が検討されています。
特に不登校の中でも「外出もままならない生徒」に対するオンライン授業支援が、相当の危機感を持って進められていると思います。
まとめ

- 私はオンライン授業を受けたことがないのですが、オンライン授業を通じて専門家を招いての授業があれば楽しそうですよね。学校に所属する先生だけでなく、他の専門家が授業を行うことで、画一的な教育から抜け出せる可能性があると思います。
- 大学は授業を自分で選択することになるので、突然「自由に選んでいいよ」という仕組みに戸惑いました。大学の学部選びも慎重に考えていたわけではなかったので。自分の興味がどこに向かっているのかを明確に把握できていなかったからです。GIGAスクール構想によって端末が配布されている今、自ら調べ学び、興味を持った分野を深堀する姿勢を身につけられたら、困惑することもなかったのかなと思います。
- 不登校になった当初、自分の安全圏は自宅だけだと思っていました。しかし、それでは学びが進まないことに気づき、再び塾に通うことにしました。もし当時オンライン授業があれば、一つの選択肢として考えていたと思います。
- ただしオンライン授業だと、授業中に交流する機会があるかどうかが気にかかりました。大阪大学の論文にもあったように、一箇所に集まって授業を受けることと比べると、人間関係が希薄になるかもしれません。メタバースなど、より距離感の近い仕組みが普及してくれるといいなと思います。

- オンライン授業について
- 2024年現在、個人の端末活用が進んでいる。リモート授業は通常授業の置換ではなく、両方を混在させることで、場所や時間に捉われない学びを実現することができる。学びの環境は生徒一人一人の事情に合わせて勉強を進めやすくなってきている。
- 日本社会には現在もオンラインで解決することをわざわざ現場で実行する、非効率な組織は多い。「オンライン対応人材」の増加は将来の日本の働き方を変え、生産性の向上につながると思った。
- 一方、小学校では「集団生活」中学校では「部活動」「先輩後輩関係」など、オンラインでは指導が難しい要素がある。オフラインの活動もより重要になると思う。
- 不登校生徒のオンライン利用
- 私自身、中学は不登校。当時は勉強意欲があるのに落ちこぼれたり、出席日数が不足したりして成績が落ちることに大きなストレスを感じていた。
- 当時は「周囲の目が気になる」が「勉強はしたい」状態。
- 自分は個別指導塾に通ったり、フリースペースに通ったけど、オンラインで出席できるのならやっていたなと思った。



